電脳世界、その海は広大で。

押井作品といえばやはり登場人物の口から発せられるモノローグであり、隠喩であり、引用句であろう。その響きに観客は魅せられ、また、そこに含まれる情報量に混乱し、ある時は微笑させられる。
何故にあれほどの情報量を詰め込む必要があるのだろうか。
最近、電子や情報に関して勉強する機会を得たボクは一つの見解を得た。
あの台詞たちは「ノイズ」なのではないかと。
電脳世界を蠢くビットにノイズはつきものであり干渉しあっている。しかし弱められることはあってもその電子の流れの中に必要なデータはしっかりと乗っている。
「NOёL3」というギャルゲーを知っているだろうか?
http://www.hamster.co.jp/products/soft.cgi?ps&86609
http://infinity-loop.cside.com/noel/three/noel3.htm
http://diary.hatena.ne.jp/shanghai/20040213
その内容は、プレイヤーがハッカーとなりテロリストに捉えられた主人公たちをネットハックして解放に導くというものである。このゲームの面白さは、ハックしていく中で、その情報の7割が攻略に関係ない「クズ情報」として存在していることであり、しかもその「クズ情報」は、役に立とうが立つまいが確立した「情報」としてしっかり作りこまれていることである(InformationとInteligenceと言えるかもしれない)。つまり「ノイズ」であり、それを無視しても攻略はできる。が、それに惑わされるかもしれないし、その中にちょっとした情報を見つけほくそ笑むかもしれない。
実際のネットの楽しみもこんなところだろう。広大なネットは必要な情報だけではない。その絶望的なほどの圧倒的多数が「ノイズ」である。だが、その中に拾い物があることも事実で、新たな楽しみや興味、はたまた怒りや混乱を見つけることもあるだろうし、ここを読むような方々はきっとその面白さを理解しているだろうと思う。
そんな電脳世界のビットや電子、ノイズを仮想体験させてくれるのがこの作品なのではないだろうか。前項にも書いたことにも関連してくるだろう。
(欄外にゴチャゴチャと色々書き殴られている原作とも、そんな意味で近いと言えるかもしれない。)
登場人物たちが囁き、呟く台詞たち。その意味を受け取りあなたはクスリと笑うかもしれない。それはなんら間違っていないしどんどん楽しんで欲しい。色々調べてまた見返して一人合点するのも楽しいかもしれない。
ただそれだけがこの作品の持つ意味ではないと思うしそれで訳知り顔で人にひけらかしてなど欲しくはない。
何故ならネットの海は広大なのだから。