【ここ】show must go on【何週間最終回】

続きです。相変わらず長いです。ごめんなさい。


動こう、決めたのは良かったが、帰省での疲れや鴨ちゃんの死から色々考えたこと、ローン審査に落ちたこと、他にも様々なことがありなかなか眠れなかった。思考が止まらない。

screammachineくんの公演に呼ばれていたが、結局行こうと思っていた回も行けず、その次も行けなかった。前回書いた通り、せっかく再会を果たして「何か面白いことをやろう!」と言ってたばかりのバカンス母くんも父島に転勤だ。


でも動かなきゃ何も変わらない。
土曜日夜のscreammachineくんの劇団の公演に体を奮い立たせ電車に飛び乗った。そしてそのまま夜は尊敬する方のショーの撮影に直行だ。浮き上がる心を落ち着かせる様々な手段を取り、会場に着くと、みをさんとえちゅーさんに再会。なんかホッとした。
公演もとても良かった。悪い意味ではなく漫画的なSFで面白く、そして愚直ながらも前に進むことの素晴らしさを教えてくれた。
クライマックスは舞台上と一体化して主人公の明日を信じ拍手を送りたかったが、雰囲気と気恥ずかしさでできなかったのが悔やまれる。
終了後、screammachineくんと軽く話して「一度やりたかったんですよ」と一緒に写メ。


「やっぱ人を楽しませるのっていいなぁ」と気分は持ち返し、六本木の会場に向かう。でも、これから課せられた使命に心はギシギシ鳴っていた。
会場に到着。実を言うと終電逃して夜通し歩いて通り過ぎたとき以外は初めての六本木。
通されたのがVIP席(notパメラ・アンダーソン)でビビりまくる。里谷多英が外人とガチンコファックしてたらどうしよう?
まあそんなわけもなく、尊敬する方々と久しぶりの再会を果たして喜んでいただきハグも頂く。元気そうでこちらもつられてほころんでしまう。
主催者の方もフランクで、同席してた方々も面白い方々ばっかりでカタギからかけ離れた話に花が咲き、面白くてしょうがない。
途中、動線や照明の打ち合わせが入り、会場が暗いことやお客が入ること、2台は固定であること、全体とした流れを掴めるように映すこと、ショーの雰囲気を壊さないためカメラの色合いを合わせ明るくなりすぎないようにすることなど、様々なことを考慮しつつ、位置やプランを練り、決定。ここでは、先日知り合った三里眼くんに事前に助言を頂いたのがかなり役に立った。ライブは一発勝負。失敗は許されない。でもこの緊張感と集中力の上がり度合いがたまらない。でも流石に緊張でちょっとトイレで吐いた。


ショーが始まる。
何度も見ているが素晴らしい舞台だ。この2人の生き様と裏打ちされた技術と信頼感と愛情が溢れている。ショーそのものが人生を現している、そして確固としたエンターテイメント。逆を言えば人生がショーなのだろうか。そして我々はそれぞれの舞台を演じる役者なのか。悲劇であれ喜劇であれ。
でもそれに見とれちゃいけない。カメラ片手に美味しいところを押さえなければ。ボクはそれを切り取る道化者。他は固定。しっかり映すかどうかコントロールは手の中にあるカメラしかないのだから。固定カメラの位置が気になり、気が途切れた部分もあったが、いつもながら2人の舞台の音楽が面白いので、ノリに乗ってカメラに収めていく。体は興奮と喜びで汗にまみれていた。


ショー終了。
解放感と充実感からビールが美味しくてしょうがない。
ショーを終えたお二人やスタッフにお礼を言い、とりあえず映り具合をチェック。かなりイケてる。直前までやる予定が無かったいつもの照明さんが急遽入ってくれたのか照明が良く、素晴らしく画が映えていた。さらに安心感と満足感。嫌なことを忘れられた。
その間にも席には様々な人が出入りする。面白い方や会えると思えなかった人や凄い人ばかり。「こんなとこにいていいの?」と信じられない気分。出てくる話も信じられない話ばかり。
今回のショーの尊敬する方のお一人から、あの舞台での音楽をmixしている方を紹介してもらい、3人で一緒に飲んで、お話する。歳も近く、音楽の方は同い年なのもあり、趣味が共通している部分も多く話ははずみ、お酒も美味しいし、話もとても楽しい。
そして、六本木に来たらやっぱこれは夢。
「再会を祝してのカルアミルク」(notバーボンソーダ
閉店するまで飲んで語り合い、信じられないような夢のような一夜を過ごした。


帰って夢心地のような気分を味わっていたけど、まだ編集は残っている。
そして現実として入学は決まっていない。
こんな気分では「映像の神様」は降りてこない。
もう一度全てのビデオをチェックして一人反省会そして流れを頭で組み立て、一つの作品として成立しえることをなんとなく確認。


やはり眠れない。
現実問題がある限りあせりばかりがつのる。その先はるか先までついつい考え込んでしまう(落ち込むだけではなく、もしもの場合にどうするかも含めて)。
しかし、ここで、友達に占い師の経験も生かしてもらってカウンセリングしてもらい、なんとか、客観的な思考と、自分を信じることを回復。


水曜に撮影があるので、やれることをやり、ひとまず体調を充実させるためにあせることを忘れ休む。
当日の結果は前々回の日記の冒頭に。結果を残せてよかった。
この日でもう一つ心に残ったのは、ライブ前にメシを食おうということになり、10年前から通ってる歌舞伎町コマ劇地下の洋食屋「峰」に案内したときのこと。ここは美味いわ、メシの量が多いわ、おかわり自由だわ、と歌舞伎町のちょっとしたオアシス。
ここには戦前から歌舞伎町のこの場所でずっと店をやってる化石のような名物ババァがいたのだが、数年前から姿を見せなくなっていた。
「流石にくたばったか」と思い、久しぶりに帰って来たこともあり、「お婆さんどうしました?」と聞いてみると「ああ、店には出てないけどまだ全然元気だよ!」と言われ、つい嬉しくなってしまう。
時代と街は刻々と変わって行き歌舞伎町も以前に比べれば火が消えたようだが、変わらない歴史と人と思い出は健在だった。それがとても嬉しかった。もう一度厨房立って無理矢理おかわり薦めてくれる姿が見たいけどそれは贅沢なのかなぁ。


それにしても変わらぬ現実問題。新しい教育ローンを用意してもらったが、書類関係をそろえるには時間が足りない。入学説明会は土曜だ。
こんなときこそ客観的になれ。
ライブ撮影と歌舞伎町の空気に触れたのがいい契機になったのか、突然頭は回りだす。
ちょっとここでは書けないちょいアンモラルでイリーガルな方法だけど、なんとか間に合わせる方策を編み出した。
時間ももう夜遅かったが、今回ばかりは人の迷惑省みず、四方八方に連絡と確認と約束を入れまくり、なんとか算段が立った。


次の日から即実行。
高杉東行先生に倣い「動けば雷電の如く発すれば風雨の如し」也。
やることはやった。あとは結果を待つだけだ。


金曜日、アラケモ。クルー東京支部の194くんにお呼ばれしてタコスパティー。そしてこの日は194くんの就職決定祝いでもあり。おめでたい。そしてボクのこれからはまだ連絡来ず。
美味しいタコス巻きやタコライス

に舌鼓を打ち、「これこっちで出すなら何円ぐらい?」と将来のタコスケータリングビジネス話に打ち込んでたら、時間。
この後は、去年、クリスマスイブのcdyaでのライブでお知り合いになった元たまの滝本晃司さんの下北水中ライブに行く予定が入っていた。
失礼と思いつつお暇し、下北沢に向かう。
まだ連絡は来ない。
ライブはもう始まっている。
でもこんな気持ちで見たくは無いし、途中で携帯が鳴って外に出るのも気が引ける。
下北沢を彷徨い、待った。
携帯が鳴った。
「審査通りました。明日説明会ですので来て下さい。」
やっと、やっとだった。
半ば無茶な計画で沖縄を飛び出し、信じられない奇跡にめぐまれつつ、最後の最後でつまづいたのが、やっと一歩を踏み出せたのだった。


遅れてライブ会場に入った。
8畳ぐらいしかない、でも暗さと枯れた感じがとても心地よい店。

そこに滝本さんも歌声とギターが響いていた。
ギター一本と小さなスピーカーと20人程度の、しかし熱気に溢れたお客さん。そして店の端々にまで刺さる滝本さんの歌と曲と歌詞。それがお店の雰囲気と調和して素晴らしい空間を作っていた。グッときた。
滝本さんの曲は、とても不思議で、歌っている本人がそこにいて歌っているうちにいなくなるような、そんな不可思議な感じを覚える。滝本さんを見ているんだけど、其の先にある自分の心の風景を見ている、そんな感じだ。
でも途中で入る滝本さんのトークは滝本さん自身のゆるりとした存在感をしっかり感じさせてくれる。失礼かもしれないけど、「妖怪みたい」そんなことを思わせた。
そんな空間と曲に、これまでの緊張がほぐれたのか、つい涙腺が緩んでしまう。沖縄ライブで聴いたときには、山形のあのピンと冷たく張ったどこか物寂しいような高い空や景色を思い出したけど、不思議なことにここで浮かんでくるのは沖縄の風景だった。思い浮かぶのは海や青い空じゃない。数奇にも出会った素敵な仲間やここまで連れてきてくれた色々な人の顔たちだった。
泣くまい、泣くまい、と我慢したけど、アンコールでは抑えきれなくなり、かなりの涙が溢れてしまった。もし最初から聴いていたらどんなにグシャグシャになってしまったことだろうか。
ライブ終了後。
滝本さんに挨拶に行き、感想を伝え、色々と話をした。やっぱりゆるりとしていて、とても気持ちが良かった。月一ライブなので、その月の滝本さん直筆のカレンダーが配られるのだけど、そこに描いてあるトレードマークの蛙も可愛くて微笑ましかった。

そこで飲んだギネスビールはとても美味しかった。つい3杯も。


帰りの電車、不審物が発見され、鮨詰状態の中で監禁される。
それでもボクはやってない」なんて言ってる場合じゃないほどの状態。
疲れきって降り立ったときには、最寄の駅の終電も無く、色んなことを考えながら冬にぶり返したよう寒さの中を土地勘も無い道を迷いながら歩いて帰った。30分の道を2時間かけて(笑)おかげで色々妄想できて楽しかった。
終電逃してこういうことになると、暴力痴話喧嘩に巻き込まれたり、ホモに拉致されそうになったり、シャブ中に襲われたり、殺人事件に遭遇したり、色々あったりしたもんだが、今回はそういうことは無かったから良かったなぁ(苦笑)


土曜は前日の帰りの遅さで遅刻しそうになりながらも学校説明会に。
今風の校風とビジネスライクな学校長の挨拶に辟易してしまいはしたが、「まあチャラチャラした専門学校とかよりはマシかな」と思いつつ、懐かしい外堀沿いの神田の町を歩く。
色々な店が無くなって少し切なくなったが、やはりここはあった。
「華麗のまんてん
大学時代からクソ多い量の「まんてんのカレー」としか言えないカレーを食わせてくれる、神田の学生・会社員・古本ハンターにとっての心と胃袋の補給処と言ってもいい老舗。
元々カレーがソウルフードのボクだが、ここのカレーはソウルフード中のソウルフードと言っても過言ではない。コップの水の中にスプーンは入ってくるし、親指サイズのコーヒーがついてくるところまで、とことん独特、そして「粋」。

ここの名物の親父さんはカレーを出すとき、そしてことあるごとにに「申し訳ない」と言うのが口癖。これを聞かなきゃ食った気がしないというまんてんファンも多い。
が、親父さんも歳なのか、厨房は若いお兄ちゃんが仕切っており、親父さんは店の後で広島の古場監督状態。「申し訳ない」が聞けずに残念。でも相変わらず、量は多いし、まんてんのカレーだし、心なしかちょっと美味くなってた。カツカレー550円也。大盛りでも普通盛りでも同じ値段なのは変わらず。「峰」と同じく変わらない風景があって嬉しかった。辟易していた心が充電された。


日曜は前回書いたように大学の仲間と靖国で花見。やっと眠れるようになたのはいいが、それに甘えてかなりの遅刻。
本当言うとみんな街並みのように変わったり落ち着いちゃってたりしたらショックだなぁ、と思っていた。
喧嘩に巻き込まれたり、前回書いたようにプレゼントに上がり過ぎてちょっと無茶したり、モーヲタ仲間のNO FUTURE後輩・タクミとあいぼんを称えて「I WISH」をアカペラで熱唱したりしたが、思ったよりみんな変わっておらず、しかも久しぶりの再会を変わらず迎えてくれて行って良かったと思う。相変わらず安酒飲まないで良い酒飲んでやがるし。美味かった、バウモア12年。


この日まだ終わらず。
花見を抜け出し向かったのは渋谷のライブハウス。
この日解散する「ニンゲンカクセイキ」のライブを、「行きたい」と言ったら、冒頭のショーで出会ったmix音楽の方が売り切れてたはずのチケットを取ってくれてありがたいばかり。だが、ここも遅刻。すみませんすみません、色々あったもので。
ニンゲンカクセイキにはちょうど間に合い一安心。
話に聞いたりホームページで見たりはしたけど、うわー!何コレ!カッチョいい!
普遍的な人間賛歌と自己卑下をアナクロかつビビッドかつ遊びに溢れたビジュアルと演出でハードな曲に乗せてアジるように歌い上げる「カッコいいことはなんてカッコ悪いんだろう」というのが良く判ってるというか、バランス感覚に優れている。ゆえにこっちからノっていきやすく、久しぶりに気持ちよくモッシュしまくり叫びまくりでしたYO!
いや〜面白かった!燃えた!終わった後にちょうど会ったmix音楽の方に思わず土下座して感謝してしまいました。
解散なのと金足りなくて物販買えなかったのが悲しい。


明けて、月曜日。
モッシュやガチンコファイトの筋肉痛などほとんどないのが不思議だが、恐ろしいまでの徒労感。そして、脳味噌に押し寄せてくる無駄な思考の数々。
そうだよな〜、仕事辞めてから、イベント、引越し、入学、撮影、色々ありすぎたよな〜。
無駄な思考がボクに「何かやれ!動け!」とこれまでの如く焚きつけるのだが、ここは大事の前の小事、そして頑張ってあきらめずに突っ走りやり遂げてきた自分へのご褒美と判断。無理に思考を押さえつけて、「水曜どうでしょう」でも見ながら閉じることに決定。


そう、まだ始まったばかりなのだ。
ショーは続いている。化粧が剥がれても笑い続け、傷ついても、チャンスを逃そうとも、恋に破れても、人生というショーを続けていかなければならないのだ。
面白いショー見せるために、見た人の明日の糧となるように。
カーテンコールが終わり緞帳が閉まるまで終わりは無い。
そのためには必要なことは必要だ。


途中、バカンス母さんの見送りと桜金造との接触はあったが、帰りに浜松町の友達の勤めてる花屋で本人には会えなかったものの、ジンジャーのサシャを買って帰って、その香りに包まれながら気持ちよく2日半、寝続ける。
悪夢全く見ず。惰眠をむさぼる。


判断は正しかった。回復は著しく気力体力充実。
ライブで泣けたり、悪夢を見なくなったり、仕事辞めてから確実に回復してきてるのがわかり嬉しい。
さっそく沖縄での地獄車のライブと冒頭のショーの編集に入る。映像の神様がこういうときこそやっぱり降りてくるらしく、キャプチャー、同期等はグングンと進み、2つの編集作業の両方ともを半分以上進めてしまった。
さらには、これまで忙しくてできなかった細かい手続きや、4月にある学校の補講の調整と三里眼くんに頼まれていた撮影補助の日程の調整も完了。
快調に進むので気持ちよく、食欲もバツグン。空は久しぶりに晴れ、洗濯にも最適。つい洗濯干し場の屋上で鼻歌でもかましてしまいそうだ。
そのまま気持ちよく、今日はやるだけのことはやった、とご褒美にビールを買ってきて飲みながら沖縄のトマトさんと煮え煮え話に花を咲かせる。


しかし、人生というショーは何が起こるかわからない。


さぁて明日もやるぞ、と早めの睡眠を取ろうかと思ったら、見知らぬ電話番号から電話が。
出てみると、高校時代の親友のお母さんからだった。


その親友が、携帯も荷物も残し、失踪してしまったというのだ。


よく彼の家には通っていたし、家族皆さんからお世話になっていたから、彼の携帯の中からボクの電話番号を見つけ、藁にもすがる思いで電話したのだろう。
詳しくは聞かなかったが、10年以上会っておらず県外に就職している彼であるにも関わらず、ボクに電話してくるなどということからかなり状況は切迫していることは容易に想像がつく。
彼は去年、同窓会に出席していなかったが、翌日わざわざ電話してきてくれて近況を話し合い、ボクの状況を心配してくれて、今度はきっと飲もう、そう電話口で話してくれた。それ以来だ。それがこんなことになるなんて。


「申し訳ありませんが、ボクに心当たりはありません。ですが、高校の同期にできるだけ当たってみます」


そう答えるしかなかった。
携帯に入っている数少ない高校の同期に電話し、ネットで繋がっている同期にも事情を話し協力を呼びかけた。
ボクのやれることは微力だが、なんとかここから広がっていってどこかで引っかかってくれることを願って止まない。幸運にも去年同窓会が発足してある程度ネットワークはできている。


やるだけはやった。でもどこかやり切れない。
何かもっとやれることはないのか、そんなことを考えて浅い眠りに就いた。途中、別件のメールが入ったりして起きたりしてるうちにロクにも眠れず、3時前に目が覚めてしまった。
とりあえず、メシを食って、その気持ちをひとまず忘れるために残していたこのクソ長い日記を書いている。


そろそろちょうどいい時間だ。
書き上げたらもう一度彼のお母さんに電話して状況報告と詳しい事情を聞いてみるつもりだ。


人生はショー。
ショーは続けなければならない。
ただここはひとまずのハッピーエンドを願わずにはいられない。