断言しよう!M・ムーアとはアイコラ職人だ!

xxx1shot2kill2004-09-12

やれ偏向している、やれ陰謀論だの、やれ売名行為だの、好意嫌悪様々入り乱れて論じられている『華氏911』。さっそく観に行ってきたのですが、そこらへんの意見は散々語り尽くされていると思うので、ボクなりの感想を述べてみたいと思う。

ボウリング・フォー・コロンバイン』を観たときから思っていたのだが、M・ムーア氏の作品はドキュメントにも関わらず、そのジョークと度胸に富んだ内容で、エンターテイメントとも言え、最後まで飽きずに見させてくれるどころかスリルとサスペンス、そして笑いを与えてくれる。ブッシュ降ろしを主眼に置いた今作品は、エンターテイメントとしては前作に比較して物足りないものの、その本質としては劣っていないと思う。ニュースが伝えなかった衝撃的な映像、そして周辺のスキャンダラスな話題は観客を呼ぶのに一役買い、政治に興味の無いアメリカの若者たちも映画館に殺到しているという。まあ悪趣味だといえば悪趣味なのだとは言えるが、ブッシュをホワイトハウスから追い出すには一人にでも多く見てもらうのが大事なのだから当然といえば当然だ。

だが内容はどうあれ、ムーア作品で僕の目を引くのはそのつぎはぎの上手さ、構成の妙とでも言うのだろうか。ムーア自身が突撃取材で度肝を抜くシーンにも感動を覚えるのだが、その面白さは、様々な素材の中からステキな部分を抽出し、対象の立場というものを崩す映像をドンドン入れていく。でもこれはどこのドキュメントでもやっていることだ。その合間合間に入れていく対象のアンチテーゼの入れ方が絶妙なのである。その中でエンドに向けて対象の足場は崩れ去っていく。前作ではM・マンソンやM・ストーンが銃社会礼賛者たちのマヌケっぷりとは見事に対照的にその理知的さを見せて笑いを誘ってくれた。今作品では何がアンチテーゼだっただろう?ブッシュ批判者が山ほど出てきたがそれはあまり笑いを誘わなかったように思える。ブッシュ政権の裏で手を引く大企業のハシャギっぷり?それもあるかも。だけど今作品の対照でもあり、アンチテーゼでもあり、ピエロでもあったのは何と言っても「G・W・ブッシュ」自身である。ショッキングな映像やアメリカの現実の合間に挟まれるブッシュのマヌケ面。それだけで説得力は充分だ。

前作『B・F・C』では銃社会の象徴としてC・ヘストンがクライマックスの標的となった。そして今作『華氏911』はブッシュそのものが象徴であり標的なのだ。つぎはぎ?捏造?そんなものはどうでもいい。ヘストンもブッシュもムーアという表現者にとってのアイドルなのだ。
素材を切って貼って加工して、そして観る人にしっかりと興奮してもらうのだ。
そう、『華氏911』とはブッシュのアイコラなのだとボクは思う。いや、バカコラかも。
論理的組み立ては前作より強引かもしれない。だが作品を一個のアイコラ画像として考えたら前作より見事なコラージュとして成り立っているとボクは思う。グラビアや写真集では無いのだからドキュメントとしては邪道だ。現に著作権論争のように上映禁止騒動も起こったし批判も山のようだ。だが目的は達している。
だってみんな興奮してるんだもん。

M・ムーアとは顔出し上等!とアイコラを作りまくるアイコラ職人だ。

イラクで死に絶える若者やイラク国民で満たされたフェアウェイ、夢も希望も無くクラブを引くアメリカ下層の人間たち、そこにマヌケ面で狂喜しながらへっぽこショットを打ち込むブッシュ。そんなショットに大拍手の軍事産業の重役たち。
そんなアイコラが出来上がりそうだ。
あ、もちろんハスラー誌のハードコアショットにブッシュの顔をコラしてもOKよ。
どっちも変わりないから。

ボクですか?ボクはしっかりオナニーさせてもらいましたよ。